介護における排便の現実

介護 排便
どうも!、私は医療・介護の世界にて長年働いており、近年の介護事情にも精通している作業療法士の田中です。
高齢者の介護の中でも、最も大変なことの一つに排泄のお世話がありますよね。
特に排便に関しては、高齢者や要介護者には便秘気味の方も多くて大変困ります。
お薬に頼ると逆に下痢気味となって仕方なくおむつを利用……という場合もあります。
1日に何度もトイレ介助するのは、かなり大変な仕事なのに空振りも多くて本当に疲れますね。
でも、その一方で全国の介護施設の中には「おむつゼロ」を実現しているところもあるそうです。
今回は、そのような優良施設も参考にしながら、自然排便の促進と便秘解消の4つのポイントを考えてみましょう!

ポイント1!自然排便の介護!!水分摂取の重要性とは?

快適な排便のためには、1日に1500cc以上の水分摂取が必要です。
そんなに飲めるの?と言いたくなるかもしれませんが、とても大事なことです。
嚥下障害(えんげしょうがい)といって、飲み込みに障害がある場合は、飲み物にとろみをつけるなどの工夫が必要です。
また、正しい姿勢や食器の工夫なども含めて総合的に考える必要がありそうです。

また、1500ccというのもあくまで目安にすぎません。脱水にならないような注意が最低限必要です。
体内の水分が減少すると脱水になります。
脱水になると様々な症状が現れ、最悪の場合は死に至りますが、どのくらいの水分が足りなくなると脱水症状のでしょうか。

意識障害

高齢者の身体の総水分量は体重の約50%です。体重50kgの場合、総水分量は25リットルとなります。
そのうち1~2%が不足すると意識障害を起こすのです。
体重50kgの人の1~2%は量にして250cc~500ccとなり、その量はペットボトル1本分程度ですね。
もしかすると利用者さんがいつもぼんやりしているのは、意識障害の可能性があります。

意識障害とは以下のような症状が現れます。

  • 奇妙な行動をとる
  • ぼんやりとして傾眠傾向になる
  • 発話が少なくなり覚醒が下がる

ケアカンファレンスで、最近認知症が進んだみたい?という場合は、まず脱水による意識障害を疑うべきでしょう。

発熱、循環機能への影響

体重の2~3%の水分が不足すると体温上昇が生じます。
体重50kgなら500cc~750ccですね。

一般的に体温は37度を超えなければ平熱と言われていますが、高齢者の場合は別です。
高齢者の中には普段の体温が低い方も多いので、36.5度以上でも微熱という可能性があります。
そのため普段の体温をよく確認しておく必要があります。
また、発熱すると血液が凝縮されるために、脳梗塞を起こす可能性が高まります。
脱水症状は特に夏場には注意が必要です。

運動機能低下

体重の5%の水分が不足すると運動機能の低下がみられます。
体重50kgなら1250ccです。

手足に力が入らずに自力で食事がとれなくなったり、歩行時にふらつきがみられます。
このような場合には、単純に筋力低下や加齢のためと決めつけずに脱水症状を疑いましょう。

幻覚

体重の7%の水分が不足すると幻覚を生じやすくなります。
体重50kgなら1750ccですね。

幻覚は興奮を伴いせん妄と呼ばれる状態になります。
このような場合も、よく認知症の進行が疑われやすいと思います。
たしかに、幻覚を主症状とするような認知症もあることは事実です。でも、先ずは脱水症状を疑ってみることが重要です。

水分摂取は、自然排便の促進以外にも、とても大切なポイントがありますね。
ケアの基本として、しっかり確認をしておきましょう。

ポイント2!自然排便の介護!!食事の重要性とは?

食事は1日1500kcalを目安に

現代の日本人は、メダボ予防や美容の意識からか、体重が増えることに神経質になっています。
肥満は良くありませんが、BMIが高くない高齢者にまで太ることを避けるのは本末転倒です。
最近は、少し太り気味の方が寿命が長くなるというデータもでています。
1日に1500kcalを目安に食事を摂取しましょう。

食物繊維をとりましょう

1日の食物繊維の摂取量は、成人男性で19g、女性で17gが必要とされていますが、元気な成人でもそこまではとれていないかもしれません。
大便の組成は、消化された食物の残りかすと水分や腸粘膜の脱落したもの、腸内細菌の残骸などです。
この中で、意図的にコントロールできるのは、食物と水分ですが、食物の残りかすの大半は繊維ですので、繊維を多くとることが便の形成には不可欠なのです。

さあ、後半も重要なポイントがあります。中には、まだあなたが知らないこともあるかもしれません。
この先も読まないと後悔しますよ。

ポイント3!自然排便の介護!!定時排便と座位排便とは?

介護 トイレ

通常良くある習慣性の便秘には、弛緩性の便秘や直腸性の便秘があります。
弛緩性の便秘とは、筋肉の衰えなどにより腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下することで、便が腸の中に止まっている時間が長くなり、その間に水分が吸収されて硬い便となって詰まってしまうことです。
これには、後にも述べるような全身的な運動が必要となります。

直腸性の便秘とは、通常であれば直腸に便が溜まることで便意が起きて排便反射が出現することに対して、便意が生じないことで便秘になることをいいます。
これについては、とにかく便座に座ることが重要となります。

いつ、便座に座るかも大事ですが、多く場合は朝食後が良いと思われます。
朝食後は、胃大腸反射というものが作用して、食べ物が胃に入ることで消化器系の働きが良くなります。
もし、この時に便が直腸まで降りていれば、めでたく排便となります。

そうでない場合でも、S状結腸から直腸に便が降りてくるのを待つことができれば排便はおこります。
これには、大体20~30分かかります。
しかし、仮にうまく行かない場合でも、これを習慣にすることが大事です。
もともと、75歳以上の1割程度は障害がなくても便秘がちです。
特に女性は、約半数が便秘の経験者と言われます。
つまり、毎日排便すること自体が当たり前のことではないのです。

それよりも問題なのは、便意を感じた時に素早くトレイへ行けないことにより、便秘が慢性化することです。
朝食後に便座に座ることを習慣化することの利点は、便意を感じた時に、介助を待つことなく排便ができることです。

そして、排便しやすい姿勢の確保を大事です。
写真は、便器の前に折りたたみ可能のテーブルを設置した場面です。
これを手すり代わりに設置することで、乗り移りや下衣着脱の自立を促すだけではなく、排便時に前かがみ姿勢をとることが可能になります。
排便の3大条件は、重力、腹圧、直腸の収縮です。
前かがみ姿勢で足を床につけて踏ん張ることは腹圧を高めるために重要なことなのです。
私たちも自然にやってますよね。
ちなみに、このテーブルは高齢者の参拝も多い、京都の清水寺にもあるんですよ。

ポイント4!自然排便の介護!!運動は歩行が基本とは?

排便の反射には、起立性反射というものもあります。
朝、起き上がって、歩くことにより大腸の中を便が移動することを促します。
ですから、リハビリや機能訓練は、基本的には起立や歩行訓練を中心に行います。
もし、歩行が自立すれば最も良いことです。
しかし、仮に自立しない場合でも、歩くことは全身運動ですから、様々な日常生活の自立が促される可能性があります。
自然排便と自立度の向上のために、歩行訓練を多く行いましょう。

歩行は、筋力やバランス、関節の運動以外にも神経の働きが重要となります。
僅かな運動では、神経や筋肉の機能は再獲得できません。
1日に何度も歩行器や平行棒などで歩行訓練を行うことが必要です。
それに加えて、日常の移動をなるべく歩行で行いましょう。
食堂への移動、トイレへの移動、レクレーション室への移動など、1日に5~6回、5分程度の歩行訓練を行ってください。
歩けない場合でも、車椅子から椅子などへの乗り移りを多く行うように心がける必要があります。

介護の排便のまとめ

快適な排便のためには、1日に1500cc以上の水分摂取が必要です。脱水を防いで、健康を維持しましょう。
1日に1500kcalを目安に、食物繊維もとりましょう。
朝食後は便座にすわりましょう。毎朝の習慣化が重要です。
1日に5~6回、5分程度の歩行訓練を行いましょう。
歩けない場合は、車椅子から椅子などの乗り移りをなるべく多く行いましょう。



投稿者プロフィール

作業療法士の田中です。
作業療法士の田中です。
30年以上に渡り作業療法士という仕事をやっています。
現在は老人保健施設のリハビリの管理職として勤務をしています。
介護の資格は作業療法士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターを取得しています。
こちらでは介護のシステムや介護機器についての記事を書いてゆきます。