介護における椅子について

介護 椅子どうも!、私は医療・介護の世界にて長年働いており、近年の介護事情にも精通している作業療法士田中です。
皆さんは、最近流行りの「自立支援介護」という言葉をお聞きになったことはありますか。
介護とは、一般的には要介護者へのお世話をすることと理解されていますね。もちろん、それも間違いではありません。しかし、今、注目されているのは、介護により自立を促す「自立支援介護」といわれるものです。究極の形は、要介護度を軽くしてしまうような介護です。実は、私の職場でもこの自立支援介護により要介護度が軽くなる例が見られています。

自立支援介護とは

自立支援介護とは、水分摂取、栄養、排便、運動などの重要性に着目して、体力や心身機能の回復を促すものです。
これまでの、「単なるお世話型の介護」に対して、自立を支援することから「自立支援介護」と言われます。

国の方針により、介護報酬においても「単なるお世話型介護」は徐々に単価が下がりつつありますが、「自立支援介護」は逆に上がりつつあります。
さらに、今後は要介護度が改善した場合には加算が上乗せされる可能性もあります。
このように、これからも重要視される「自立支援介護」ですが、その第一歩目は、椅子に座ることです。実際に、寝たきりを予防できるかどうかは、座れるかどうかといっても過言ではありません。

椅子に座ることが第一歩

座ることのメリットには何があるでしょう。

  • 食事が食べやすくなる
  • 床ずれができにくい、治りやすい
  • 排便がしやすくなる
  • 筋肉が強くなる
  • 身体のバランスが良くなる
  • 表情がよくなる
  • 血圧調整が良くなる
  • 肺活量が増える
  • 手足の拘縮を予防できる

 
など、実にさまざまです。

よく、身体機能の状態によっては、車椅子やリクライニング車椅子を用いることもありますね。
もちろん、それも寝たきりよりははるかに良いのですが、やはりきちんとした椅子に座る方が望ましいのです。
本来、座るという動作は、お尻と足の裏で体重を支えて背中を起こした状態なのです。
これにより、日常のさまざまな動作が行いやすくなり、意識状態もしっかりとしてきます。

食事では、テーブルに対して少し前かがみの姿勢をとることにより、食べ物が良く見えますし、匂いをしっかりと感じることができます。
そして、飲み込みの際は私たちと同じように、少しうなづくような動作が行いやすくなり誤嚥をふせぐ効果もあります。

座っていると、私たちでも自然とお尻を動かして痛みを感じないようにします。
これによりお尻の血行も促されますので、床ずれもできにくくなります。

寝たきりや車椅子での座りきりは、便秘を助長することがあります。
スムースな排便には、重力により便が腸内を移動したり、腹圧をかけて力むことが必要です。
座位をとることは、腹筋などを活性化させて排便を促進する効果があります。

筋肉は、使わないと徐々に萎縮して弱ることがわかっています。
両足を床につけて座ることで、脚やお尻、背中やお腹などの筋肉が常に使われます。
加えて、立ち上がったり、車椅子に乗り移る回数が自然と多くなりますので、全身の筋力が高められる効果があります。

他にも、意識状態がしっかりして言葉が出やすくなったり、認知機能の低下を防ぐなどの多くのメリットがあります。
実際に、私の職場の利用者さんたちの中にも、寝たきりや車椅子での座りきりを止めて、椅子に座ることを習慣にしたことで、要介護度が軽くなったお年寄りが何人もいるのです。
では、どのような椅子が良いのでしょうか?
特別な椅子なのでしょうか?
それは、ちょっと意外なことかもしれません。
知らないと、もったいないですよ!。

自立支援介護にはどのような椅子がいいの?

きちんとした椅子に座ることは、多くのメリットがあります。
では、どのような椅子を選ぶことが、自立支援介護に良いのでしょうか。
ジャーン!、これです。
介護 椅子

写真は、一見するとごく普通の椅子ですね。
でも、高さがそれぞれ違うのがわかると思います。
利用者さんたちは身長も脚の長さもさまざまですので、なるべく身体にあったものを用意します。
具体的には座った時に足の裏が床にちゃんと着いて、横からみて膝関節や股関節がほぼ90度になる高さです。

背もたれは、あまり後ろに傾斜しないで、自然に背中が伸ばせるようなものを選びます。
両足が床に着くことで、前かがみをとりやすくなり、太ももにも力が入りやすくなりますので、自然と下半身の力も鍛えられます。
自然な立ち上がり動作では、かかとを膝よりも後ろに引く必要がありますので、足元に邪魔な物がないことも重要ですね。
椅子に座るだけで自立が促されるなんて、本当??、と思う方もいるかと思います。

実は、私も最初は半信半疑でした。
しかし、実際に椅子を使って日常生活を送ると1日に何度も脚を使うことになります。

トイレだけ考えても日中に10回前後行きます。
そして、その度に立ち上がったり車椅子への乗り移りが行われます。
毎回介助をするのは大変な面もありますが
長い目で見れば利用者さんの筋力が強くなりますので、むしろ介助量が減り徐々に職員も楽になります。
そして、何よりも利用者さんの状態が少しずつ良くなることを実感できるのです。
リハビリや機能訓練も必要ですが、それだけでは運動量は少ないですよね。

自立支援介護に適した椅子のまとめ

1,「自立支援介護とは」のまとめ
自立を支援する「自立支援介護」。座ることが寝たきりを予防します。

2,「椅子に座ることが第一歩」のまとめ
椅子に座ることで沢山のメリットがあります。食事や床ずれ防止、排便促進、筋力アップなどに加えて認知症予防にもなります。

3,「自立支援介護にはどのような椅子がいいの?」のまとめ
足の裏がしっかり床について、背中が自然に伸ばせるもの。
目安は、横からみて膝関節と股関節が90度程度です。



投稿者プロフィール

作業療法士の田中です。
作業療法士の田中です。
30年以上に渡り作業療法士という仕事をやっています。
現在は老人保健施設のリハビリの管理職として勤務をしています。
介護の資格は作業療法士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターを取得しています。
こちらでは介護のシステムや介護機器についての記事を書いてゆきます。