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どうも!、私は医療・介護の世界にて長年働いており、近年の介護事情にも精通している作業療法士の田中です。
身体拘束とは何でしょうか?
特別養護老人ホームなどの介護施設では、身体拘束禁止規定というものがあります。
今後は、この流れがさらに強化されることになりそうです。
2017年11月時点の情報では、2018年度より身体拘束に対する基準の厳格化が示され、守らない場合には罰則も設けられるということが決まりつつあるようです。
背景には、昨今の介護事故報道より、身体拘束や高齢者虐待の事実が世間に知れ渡ってきたことがあるでしょう。
今回は、身体拘束について、考えてみましょう。
身体拘束とは
身体拘束とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?
介護保険指定基準において、身体拘束として挙げられているのは以下のことです。
- 徘徊防止のため、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
- 転落防止のため、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
- ベッドを柵(サイドレール)で囲む
- 点滴や経管栄養等の管を抜かないように、四肢をひも等で縛る
- 点滴や経管栄養等の管を抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、ミトンなどの手袋をつける
- 車椅子や椅子において、拘束帯やベルト、テーブルなどで身体を固定する
- 起ち上りを妨げるような椅子を使う
- 介護衣(つなぎ)を着せる
- 他人への迷惑行為を防ぐため、ベッドなどにひも等で縛る
- 向精神病薬を過剰に投与する
- 自分で扉を開けることができない部屋に隔離する
などです。
身体拘束が問題になる理由とは?
身体拘束は、何が問題なのでしょうか?
身体拘束には多くの弊害があります。
具体的に見て行きましょう。
身体拘束は、文字どおり動けないように身体を拘束することですから、身体的機能の低下を招きます。
筋力の低下や関節の拘縮を助長し、褥瘡(床ずれ)も作りやすくします。
また、食欲の低下や心肺機能の低下も起こします。
ベッドに身体を固定することで、却って、柵に身体の一部を挟んで骨折したりする危険性もあります。
同様に車椅子への固定は、車椅子ごと転倒して大怪我を招く可能性があります。
精神的な苦痛を与え、人間としての尊厳を奪います。
認知症が進むことが分かっています。
家族の心理にも、大きな影響を及ぼします。
自分の家族が縛られているのを見て、家族自身がショックを受けたり、後悔することになります。介護する側の職員にも、諦めやプライドの喪失が生じて、スタッフの士気が低下します。
身体拘束により、一時的にスタッフの業務負担が減ったとしても、そのツケは後に回ってきます。
身体拘束により、利用者の心身の状態が悪化すれば、それだけ医療費や介護費が結果的に増えます。
その負担は、国民全員が背負うことになるのです。
最近のマスコミ報道においても、身体拘束や高齢者虐待が注目されています。
その結果、介護施設や介護保険制度への不信感や偏見を引き起こす可能性があります。
せっかくの優れた制度ですが、国民の理解が得られなければ、今後の持続が困難になるでしょう
身体拘束禁止規定とは?
身体拘束が禁止されている施設とは、以下の通りです。
- 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 指定介護療養型医療施設
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)
でも、現実には、施設などで「身体介護されている利用者を見たことがある」という方もいるのではないでしょうか?
実は、身体拘束が認められる場合があります。
それは、「利用者本人や他の利用者を保護するために緊急やむを得ない場合」です。
しかし、これには、3つの要件が必要となります。
利用者本人や、他の利用者の生命や身体の危険性が著しく高い場合です。
他に良い介護方法がない場合です。
あくまで一時的な場合です。
以上、3つの全てを満たす必要性があります。
さらに、手続き面でも慎重さが求められます。
緊急やむを得ないかどうかの判断は、個人や一部の職員で行うのではなく、施設全体として行う必要性があります。
そのため、「身体拘束廃止委員会」などの組織の設置が必要です。
また、利用者や家族に対して、詳細な説明と同意が必要なことに加えて、さらに、日々の細かい記録が必要です。
これらの文書類は、行政による監査の際などには、いつでも開示できるようにしておかなければなりません。
仮に、これらの3つの要件や記録関係が適切に守られていない場合は、高齢者虐待となり、行政へ通報される可能性があります。
介護施設の身体拘束のまとめ
1,「身体拘束とは」のまとめ
身体拘束とは、利用者をベッドや車椅子などに縛りつけたり、ベッドの周囲を柵で囲み動けなくすることです。
ミトンやつなぎ服を着せたり、過剰な向精神病薬の投与も該当します。
2,「身体拘束が問題になる理由とは?」まとめ
身体拘束は、利用者自身の身体と精神を蝕むだけでなく、家族へも精神的苦痛を与えます。
また、社会的影響も大きいと言わねばなりません。
3,「身体拘束禁止規定とは?」まとめ
介護施設では、身体拘束は原則的に禁止されています。
例外となるためには、3つの要件を満たし、様々な手続きを踏まえる必要があります。
投稿者プロフィール

-
30年以上に渡り作業療法士という仕事をやっています。
現在は老人保健施設のリハビリの管理職として勤務をしています。
介護の資格は作業療法士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターを取得しています。
こちらでは介護のシステムや介護機器についての記事を書いてゆきます。
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母93歳、介護型老人ホーム入居中 要介護2
夜間ミトンの着用をしたいと職員から連絡あり
日中はシルバーカーで自力歩行してトイレに行く
(介助は必要)が
夜間ベットから自力で行かれずなんとかしようとして
オムツを外したり衣服を脱いだりするとのこと
1か月様子見たが改善せずミトン使いたいと
良い対処方法はありますでしょうか