介護の現場のテーブル選びについて

介護 テーブル
どうも!、私は医療・介護の世界にて長年働いており、近年の介護事情にも精通している作業療法士の田中です。
座ることは自立への第一歩、適切な椅子に加えてテーブル選びも大事です。
介護施設などでは、テーブルといえばまず食事風景が思い浮かびます。

それから、利用者さんたちの団欒のひとときでしょうか。
食事がスムースにできて、会話が自然と弾むようなテーブルがあれば最高と思いませんか?
さらには、認知症のケアのポイントにもなるとしたら……。
そんなテーブル選びについて考えてみましょう。

良い介護施設はテーブルを見ればわかる!

どのような椅子やテーブルを揃えているかは、介護施設の姿勢が反映されているといっても過言ではありません。
施設の見学の際は、食堂やデイルームでの利用者さん達の姿勢を見てください。
適切な高さの椅子に座り、膝が90度程度に曲がり足の裏がちゃんと床についているか?
高すぎないテーブルの上に肘から先がきちんとのっているか?、などがポイントです。

利用者さんたちを寝たきりにしないためには、車椅子で居室から連れ出して、食堂やデイルームなどで日中を過ごしてもらう必要があります。
でも、そこに安定した座位姿勢がとれる椅子やテーブルがないと、落ち着いて生活はできないですよね。
安定した座位姿勢とは、両足が床について、前かがみになれる必要があります。
そのため、椅子やテーブルは身体に合った高さであることが必要なのです。
もちろん、時にはソファなどでゆったりとくつろぐのも良いです。
しかし、沈み込みやすいソファは、前かがみ姿勢がとりにくく活動的ではありませんので、長い時間の使用は好ましくないでしょう。 

テーブルの形はどうでしょうか?
一般的には、長四角のような形状が多いでしょう。
介護 テーブル

最近は、写真のような台形や6角形のものもあります。
斜め横の利用者さん同士で自然と視線が合わせやすいので、会話もはずみやすいですね。
テーブルには、介護場面での様々な効果があります。知ると知らないとでは、明日からの介護が大きく変わりますよ。

テーブル効果その1! 誤嚥(ごえん)を防ぐ!

テーブルの高さは、若い人たちの感覚よりもやや低めのものを選ぶことが重要です。
特に食事の際に大切なことです。
それは、自然な前かがみ姿勢になれるからです。
前かがみ姿勢をとることは、食事中の誤嚥(ごえん)や食べこぼしを少なくできます。
誤嚥とは、飲み込みの際に何らかの理由で食べ物が食道ではなく気道に入り込むことです。
よく食事中にむせる場合がありますよね。
むせ自体は、むしろ誤嚥を防ぐ機能ですから、それ自体は悪くありません。
問題なのはむせることがなく周囲が気がつかないうちに誤嚥をして肺炎を起こすことです。
これを誤嚥性肺炎といいます。

前かがみの体勢では頭もやや下向きとなり、うなづきの姿勢がとりやすくなります。
実はこのうなづきの姿勢が正しい飲み込みには必要です。
試しにやってみるとわかるのですが、コップの水を少し口に含んだあと(唾液でも可)、頭を上げて少し首を反らせるようにして飲もうとしてください。
とても飲めませんよね。むせてしまう方も多いでしょう。

今度は、通常の頭の高さにして飲み込んでみます。この時に、自然に少しだけうなづき運動が起こることにお気づきのことでしょう。
嚥下(えんげ)反射の際には、喉頭(こうとう)という喉仏のあたりが少し挙上します。
うなづき運動はこの時に必要となるのです。

食事のことを考えると、テーブルの高さは、普通よりはやや低めと思えるおへその高さが理想です。
しかし、残念なことに一般的な施設では私が思う理想の高さより少し高いテーブルが多いようです。
これには、いくつか理由があると思います。

円背姿勢になりやすい高齢者に対しては、少しでも姿勢が良くなるように高めのテーブルを選択することがあるでしょう。
また、車椅子に座りきりのケースが多いため、車椅子のアームレストと呼ばれる肘当ての部分が当たりやすいことへの対応として、テーブルを高くすることもあります。
高めのテーブルは、見た目には良い面もありますが、実は誤嚥性肺炎の予防などには向かないことを知っておきましょう。

テーブル効果その2! 自立支援介護!

低めのテーブルの利点は、食事以外にもあって、立ち上がりや乗り移りの場面です。
立ち上がり動作で重要なのは、座った姿勢よりもさらに前かがみとなることです。
力の弱い利用者さん達にとっては、特に重要なポイントです。
そのため、手すり代わりにテーブルにつかまる際にも低めのテーブルが良いのです。
先ほどにご紹介した台形や6角形のテーブルだと、縁や角を手すりのように使えるのでさらに良いですね。

車椅子にテーブルをつけることもありますが、注意が必要です。
車椅子のテーブルは、身体拘束(しんたいこうそく)にあたる可能性があります。
身体拘束は、よほどのことがない限りはしてはいけません。
どうしても必要な場合のみ、適切な手続きを踏んだ上で行わなければなりません。

また、車椅子での座りきりは良くありません。
しかし、まだまだ、それが当たり前の施設も少なくないようです。
利用者さんにとっては、車椅子の方が自由に好きなところへ行けて便利な場合もあるでしょう。
スタッフにとっても、乗り移りの介助の手間も省けますし、利用者さんが独自で動くことを保証するのは、ある意味では自立支援と言えるかもしれません。

しかし、車椅子は、食事や乗り移り動作には適していません。
良く観察していただけばわかりますが、車椅子の座面は後ろ下がりとなっているため、前かがみの姿勢には向きません。
また、背もたれも後ろへ傾斜しているため、前かがみよりも後ろもたれの姿勢の方に適した機器と言えます。

テーブル効果その3! 認知症介護!

認知症の症状には、記憶の障害などの中核症状と徘徊(はいかい)などの周辺症状がありますが、周辺症状の表れ方には個人差が大きいものです。
多分、その方の性格やそれまでの生き方なども反映するのでしょう。
また、家族構成の変化などで対人関係に難しさを抱えたことで症状が目立つようになる場合もあります。
そのような高齢者の中には、他人との接触を避けるような閉じこもり傾向が見られます。

閉じこもり傾向が強くなるケースには、精神的に孤立してしまうことがきっかけになる場合があります。
このような方のケアには、利用者さんや職員との対人交流やスキンシップが重要となります。
認知症ケアには、1人ひとりの人間関係作りが大事です。
職員との交流に加えて、共感できる仲間作りが必要なのです。認知症のお年寄りは、同じ認知症の人たちと一緒にいる方が落ち着く場合があります。
端から見ると、全然話がかみあっていないのですが、きっと雰囲気が合うのでしょう。
そのような、好ましい雰囲気をかもしだすためには、何人かで同じテーブルに集うことが良いのは言うまでもないことでしょう。

介護のテーブルのまとめ

良い介護施設には、低めのテーブルがあります。両足を床につけて、少し前かがみ姿勢がポイントです。
低めのテーブルは、誤嚥を防ぎます。怖い誤嚥性肺炎からお年寄りを守りましょう。
低めテーブルで自立支援。介護度も改善します。
閉じこもりの症状には、対人交流やスキンシッップが有効。同じテーブルで仲間作りをしましょう。



投稿者プロフィール

作業療法士の田中です。
作業療法士の田中です。
30年以上に渡り作業療法士という仕事をやっています。
現在は老人保健施設のリハビリの管理職として勤務をしています。
介護の資格は作業療法士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターを取得しています。
こちらでは介護のシステムや介護機器についての記事を書いてゆきます。