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介護施設の浴槽はここが危険

介護 浴槽

どうも!、私は医療・介護の世界にて長年働いており、近年の介護事情にも精通している作業療法士の田中です。
介護相談を受けていると、浴室や浴槽の悩みをお聞きすることがあります。

  • 身体が不自由になったら、どんな改修をしたらいいの?
  • リフォームするけど、脚が伸ばせる洋式浴槽にしてもいい?
  • デイサービスは温泉のような大浴場があるところがいい?
  • 機械浴で入れてくれるのは安心?

などなどです。

実は、高齢者の事故が多い場所は浴室です。
溺水(できすい)による死亡事故が多いのです。
そのため、浴槽や浴室について正しい知識がないと、とても危険な場合があります。
今回は、浴槽について考えてみましょう。

病院や介護施設の浴槽はどうして特殊なの?

私が○十年前にリハビリ関係の病院で働き始めた時、病院の浴室は広くて、温泉のような大きな浴槽があることが印象的でした。
毎日、たくさんの患者さんが入浴介護を受けるので、広いことは当然だと思いました。
ただ、温泉のような大きな浴槽は、埋め込み式で中が深いため、多くの場合は使いにくく危険だと感じていました。
段差やスロープがあっても、それを使えるのはごく一部の患者さんに限られていました。
そのため、自宅へ帰るための入浴訓練は、浴室の片隅の家庭用の浴槽で行っていました。

また、介護保険制度ができて、各地に立派な介護施設が建ち始めたころは、施設の浴室には必ずといって良いほど機械浴の設備が標準化されていました。
重度要介護者にとって、入浴は負担の大きい場面なので、機械浴も必要なのだろうなと思った反面、一歩使用方法を誤ると事故が起きやすいことを聞いて複雑な気持ちになりました。

当時は、とにかく段差がないことが「バリアフリー」と理解されていたために、温泉のような埋め込み式大浴槽が普及したのだと思います。
それにより、出入りがより難しいことで入浴困難者が増えて、機械浴を使う比率が高かったのだと思います。
そして、その流れは現在も続いています。

具体的に、どのような問題があるのでしょうか?
大事なの内容ですから、しっかり読んで役立ててくださいね。

大浴槽の問題とこれからの流れ

ところが近年は、これまでの常識が見直されつつあり、病院や介護施設の中にも大浴槽を原則的に廃止して、家庭用の浴槽を導入するところが増えつつあります。
それは、なぜでしょうか?
実は、医療・介護業界でも大浴槽の問題点が認識され始めてきたのです。
具体的に挙げてみましょう。

埋め込み式は出入りが難しい

段差がないように、浴槽を床に完全に埋め込んだものを埋め込み式浴槽といいます。
これは、一見するとバリアフリーとも言えますが、出入りのためには床にしゃがむ動作と床から立つ動作が必要になります。
これは、普段から車椅子を使ったり、なんとか杖で歩いている方にとってはとても難しい動作ですよね。

介護が大変

広い浴槽の外側から、床より低い位置にいる高齢者を引き上げるのは肉体的に大変で、腰痛の原因となります。

段差が邪魔

本物の温泉のように、段差が1、2段ついている場合もあります。
これも、介護上は邪魔になりますね。

スロープは使えない

スロープを使って自立するような方は、ごく少数派です。

広い浴槽は危険で溺れかねない

身体が不自由な方にとって、周囲に支えがない広い浴槽の真ん中でお湯につかるのは危険としか言いようがありません。
結果的に、多くの場合は壁や手すりがある端の方しか使われることがなく、真ん中は空いている場合が多い状況です。
また、壁や手すりが近くにある場合でも、浮力によりお尻が浮きやすくなり、溺れそうになったり実際に溺死(できし)することがありえます。
入浴中の介護事故の大きな要因と言えます。

お湯の入れ替えが大変

大浴槽のお湯を入れ替えるには、時間もコストも必要です。
しかし、怠ると感染症がまん延する危険があります。

在宅復帰のための練習にならない

介護のあり方が、従来のお世話型から自立支援型へ変化しつつあります。
介護により、少しでも自立が促されることは、個人にとっても国にとっても良いことです。
しかし、大浴槽では自宅などと環境が異なるため、練習になりません。

以上が、大浴槽の問題です。

家庭用浴槽を用いるメリット

介護 浴槽
では、どのような浴槽が良いのでしょうか?
それは、家庭用の和式浴槽を半埋め込み式で用いることです。

和式浴槽の良い点は、狭くて深いということです。
流行の洋式浴槽は、脚を伸ばして寝そべるようにしてお湯につかります。
健康な人には良いのですが、高齢者や身体が不自由な場合は、不安定で最悪の時は溺れそうになることもあります。

比較的多いのは、和洋折衷浴槽と呼ばれるものですが、それよりも純粋な和式浴槽がベターです。
背中側の壁が垂直で、足の裏が反対側の壁につくので、身体が安定します。
狭くて深い和式浴槽は、肩までお湯につかっても溺れる心配がないのです。

半埋め込み式は、浴槽を床から20cm程度埋め込んで設置されています。
浴槽の外側は、40cm前後の高さですから、浴槽台やシャワー椅子を置くと出入りがやりやすくなります。
図のように、浴槽と同じ高さに浴槽台などを配置します。
浴槽台は、安全性と介助のしやすさのために広めのものが良いでしょう。

図の浴槽には、あえて手すりがありません。
手すりは、時に邪魔になる場合があります。
浴槽のへりの厚さを5cm以下にすれば、手すり代わりにもなります。
材質は、ステンレスがオススメです。
強度が高いため、へりの薄い浴槽が作りやすくなりますね。

まとめ

「病院や介護施設の浴槽はどうして特殊なの?」のまとめ
大浴槽と機械浴は、実はあまり良くありません。
バリアフリーを誤解した結果、量産されたのです。

「大浴槽の問題とこれからの流れ」のまとめ
大浴槽にはディメリットが多くあります。
介護事故のリスクが増えるので注意してください。

「家庭用浴槽を用いるメリット」のまとめ
家庭用の和式浴槽を半埋め込み式で用いるのがベストです。
浴槽台やシャワー椅子も備えて、安全にお風呂を楽しみましょう。



投稿者プロフィール

作業療法士の田中です。
作業療法士の田中です。
30年以上に渡り作業療法士という仕事をやっています。
現在は老人保健施設のリハビリの管理職として勤務をしています。
介護の資格は作業療法士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターを取得しています。
こちらでは介護のシステムや介護機器についての記事を書いてゆきます。