作業療法士が教える車椅子の選び方

介護 車椅子

どうも!、私は医療・介護の世界にて長年働いており、近年の介護事情にも精通している作業療法士の田中です。
もし、自分や身内が歩けなくなった時、真っ先に思い浮かぶのは松葉杖や車椅子を使うことですよね。
でも、車椅子って知っているようでいて、「どれが良いのかがわからない!」という意見も良く聞きます。
実際に、正しい車椅子選びと適切な調整をすることで、随分と使いやすくなることがあります。
寝たきりの方でも、上手に車椅子を使うと日中はちゃんと座っていることができて、食事やテレビ視聴も楽しむことができます。
今回は、車椅子の選び方や使い方について考えてみましょう。

ポイント1 車椅子とは、車なの?椅子なの?

歩けない人にとっては、足代わりや椅子代わりになる車椅子です。
最初は抵抗があっても、慣れてくると便利に感じることも多いようです。
しかし、車椅子は移動の道具ではありますが、きちんとした椅子とはいえません。
一度、車椅子をじっくり見てみるとわかりますが、車椅子の座面は後ろ下がりとなっていますし、背もたれも後方へ傾斜しています。
後ろにもたれた状態で姿勢が安定するための設計と思われます。
しかし、トイレへの乗り移りや立ち上がりの際には、この構造が動作を困難にする場合があります。
立ち上がりには、身体の重心を前に傾けて両足に体重がかかりやすくする必要があります。
しかし、一般的な車椅子では背もたれにもたれやすい構造になっているため、この動作が妨げられやすくなるのです。

また、車椅子は食事の際にも問題がおこりやすくなります。
食事動作は、基本的には前かがみ姿勢が必要です。
人間は、テーブルの上などに手を伸ばす場合は、姿勢が前かがみとなり、これにより両手が自由に使いやすくなります。
しかし、車椅子だと前かがみが制限されるために、結果的に食べこぼしが多くなることがあります。
嚥下(えんげ 飲み込みの運動)も、前傾姿勢の方が自然にできることが知られています。

便利な車椅子ですが、基本的には身体に合ったきちんとした椅子を用意して、こまめに乗り移りすることを心がけましょう。
そのほうが、足腰の筋力も強化されて、リハビリにもなるのです。

ポイント2 良い車椅子とは?

では、良い車椅子を選ぶポイントを考えてみましょう。
介護保険制度の活用により、在宅での要介護者の場合は、モジュール型車椅子といって、1人1人の身体に合った車椅子が使えるようになっています。
しかし、施設の場合は、原則的には施設の車椅子を使うというルールがあり、施設入所者の中には、身体に合っていない車椅子を使っているケースもしばしば見かけます。
コスト削減のために、万人が使えるような車椅子しか用意していない施設は、良い介護施設とは言えないかもしれません。
最低でも、座面や足乗せの高さが変えられるタイプのものを使うことが望ましいでしょう。

介護 車椅子

上の画像は、調整が可能なモジュール型の車椅子です。
①座面
座面には一枚もののクッションを敷いて姿勢を安定させます。
座布団を敷いている場面を見かけますが、あまり良くありません。
お尻が痛くなる場合には、後で説明するようなクッションの工夫を検討しましょう。

②車椅子の幅
広すぎると危険です。
使用者の体格に合わせて適切な幅のものを選びます。

③車軸
車軸の位置が前後や上下に移動できるものが理想です。
特に、座面の高さは車軸の位置で調整します。
床に足を降ろした状態で、下腿(脚の膝から下の部分)の長さと座面の高さを一致させることが大事です。
これにより、立ち上がりの際に、脚が踏ん張りやすくなります。

④タイヤ
空気が少なくなると、こぐ時の摩擦抵抗が増えますので、定期的に確認する必要があります。
最近では、ノーパンクタイヤも増えつつあります。

⑤肘当て
乗り移りの際に、取り外しなどができるものを選びましょう。
跳ね上げ式や、高さを上下に変えられるものもあります。

⑥フットレスト
足乗せです。
よく見かけるのは、高さ調整がされていないために膝が上に上がり、窮屈そうにしている場面です。
上下の高さ調整を行いましょう。
図は、左足側を取り外しています。
半身麻痺などで、片手片足でこぐ場合には便利です。
乗り移りの時にも、取り外したり、スイングアウト(回転させること)により足元を広くするようにしましょう。
介助者も楽になり、皮膚損傷などの怪我を防ぐ効果もあります。

また、画像では取り外されていますが、レッグレストといって、ふくらはぎから下腿を支えるような機能があります。
これは、一部の重症な方を除いては、原則的には使いません。
なぜなら、立ち上がりの時に膝を曲げて足を後ろに引く運動が妨げられるからです。

ポイント3 正しい調整とは?

座面の高さを下腿の長さに合わせましょう

床に両足を降ろした状態で、座面の高さを下腿の高さに合わせます。
これにより前傾姿勢や立ち上がり姿勢が容易となります。

フットレストの高さを調整しましょう

フットレストは、移動時に足をのせることが目的です。
高すぎると膝が曲がり窮屈になり、低すぎると床に当たります。
移動時以外は、両足を床に降ろして少しでも下半身の筋肉を使いましょう。

レッグレストは原則的には取り外しましょう
背張り

高齢や慢性的な身体障害では、背骨の変形や姿勢の傾きも珍しくありません。
そのような場合は、背張りが調整できるものが良いでしょう。
調整には、少しコツがいりますので、専門家に聞いてみてください。

ポイント4 車椅子でお尻が痛い時は?

お尻が痛くなる場合は、クッションも工夫できます。
クッションの種類と特徴は以下の通りです。

ウレタン製

よく知られているは、ウレタン製の低反発クッションです。
また、沈み込みを制限するために、高反発クッションを使う場合もあります。

ゲル製

ウレタン製と同様に圧力分散にすぐれ、ズレ力の吸収が良いことが特徴です。
蒸れやすいことや、取り外しの際にやや重いことがディメリットです。

エア入り

空気入りのクッションです。
沢山のセルの中に空気が入った構造です。
見た目は凸凹していますが、空気の上に座っているので、圧力分散には特に優れています。
個人的には、既に褥瘡(じょくそう 床ずれのこと)ができてしまっている場合におすすめです。

ポリエステル綿

よくある座布団が代表的です。
簡易で便利ですが、圧力分散効果は高くありません。
時々、数枚を重ねて使っている場合を見かけます。
そのような場合は、ウレタン製などを検討しても良いと思います。

ポイント5 リクラニング車椅子が必要な場合は?

重度な身体障害により、どうしてもリクライニング車椅子が必要な場合があることは事実です。
しかし、病院などでリクライニング車椅子を使っていた方でも、リハビリや自立支援に熱心な施設では、普通型車椅子へ移行できる場合が大半です。
まずは、諦めないことも重要です。

リクライニング車椅子を使う必要があるケースは、多くは姿勢の安定が悪い方です。
リクライニング姿勢は、寝たきりよりはまだ良いと思われますが、背もたれを倒しっぱなしだと、ほぼ寝ているのと変わりません。
状況によって、起こすことも考えましょう。

リクライニング車椅子選びのポイントは、背もたれのリクライニング機能だけではく、座面から傾斜できるティルト機能があるものを選ぶことです。
ティルト機能を主に使うことで、座面のズレを最小限度にすることができます。
床ずれ予防のポイントは、除圧とズレ力を減らすことだと覚えておいてください。

介護の車椅子のまとめ

車椅子は、移動器具です。
基本的には身体に合ったきちんとした椅子を用意して、こまめに乗り移りすることを心がけましょう。
そのほうが、足腰の筋力も強化されて、リハビリにもなります。
正しく調整ができるモジュール型車椅子を選びましょう。

座面とフットレストの高さは、しっかり調整しましょう。
必要な場合は、背張り調整も検討してください。

ウレタン製、ゲル製、エア入りなどから、最も合うものを選びましょう。

諦めずに、リクライニング車椅子から普通型車椅子へ移行しましょう。
リクライニング車椅子は、ティルト機能付きがベターです。



投稿者プロフィール

作業療法士の田中です。
作業療法士の田中です。
30年以上に渡り作業療法士という仕事をやっています。
現在は老人保健施設のリハビリの管理職として勤務をしています。
介護の資格は作業療法士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターを取得しています。
こちらでは介護のシステムや介護機器についての記事を書いてゆきます。